硝子ノ欠片-Rebirth- あとがき

2016.07.29 Friday

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    どうもこんにちは、奈緒弥です。

    たいへん今更ながら、硝子ノ欠片-Rebirth-のあとがき(のようなもの)を書きました。
    とてつもなく長いのと、ネタバレには一切配慮しておりませんので、
    もし読んでくださる方がいらっしゃいましたら、ご注意ください。
     


    まず、作品を聴いてくださった方、感想を書いてくださった方、そしてこのあとがきまで見てくださっている方、本当にありがとうございます。
    この「硝子ノ欠片」という作品は、当初の予定よりもずっと長く続いた、とても思い入れ深い作品になりました。
    今作は全キャスト依頼だったのですが、中には「シリーズ聴いていました」と言ってくださった方もいて、
    本当に本当に嬉しかったです。

    思えばこの作品をやろうと思い立ったのは中学生のときでした。
    BLで三部作の作品をやりたい、ただその思いだけで三部全部の設定を組み立てて、
    第一作目「硝子の心臓」の台本を書いて。
    はじめは三部全部バラバラのつもりだったのが、結局「二人の少年の出会って分かれて、再会するまで」を描いた作品になって。
    そうなってはじめて、この硝子ノ欠片という作品の根幹にあるテーマが、
    『硝子の心臓』のキーワードだった「君の記憶の中で、生きさせて。」だということに気づきました。

    だから私は、「少年たちの永遠の恋」を描こうと決めて、この作品を書き続けることにしました。
    『硝子の箱庭』まで終わって、これでこのシリーズはおしまいなのか、と寂しい気持ちになったけれど
    いつのまにかその続編『硝子細工の明日へ。』を書いていて。
    それも終わって、今度こそおしまいだと思っていたのですが。

    また私は、「少年たちの永遠の恋」を描くことにしてしまいました。
    それがこの『硝子ノ欠片-Rebirth-』です。



    「アダムの瞳」は、硝子の瞳に登場するキャラクター、ハーガルド・ローナンの過去を描いたスピンオフものです。
    この作品のテーマは、「永遠」「記憶」そして、「心」。
    私の書きたかった「少年たちの永遠の恋」にも「永遠」という言葉が入っているので、
    作中でハーガルドが問いかけられる「永遠があると思うか」という問いの答えによっては
    作品そのものを否定してしまいかねないので、非常に答えを出すのが難しいものでした。
    けれど、「永遠」をテーマに据えるのであれば、必ずこの「永遠はあるのか」という疑問に答えられなくてはいけないと思いました。
    永遠は、あるのか。 そもそも永遠とは、なんなのか。
    それが分かっていない人間に、「永遠」をテーマにすえた作品など書けないと思いました。
    だから、考えて考えてようやく出した答えを、作品の中に織り込みました。
    ハーガルドが口にしたその答えは、今後もこの硝子シリーズにおける「永遠」の定義にもなるのではないかなと考えています。
    永遠であると思っている限り、覚えている限り それは永遠でいられる。
    これは次のテーマ、「記憶」にも繋がるものです。

    硝子シリーズは「記憶」もとても大事なファクターです。
    「君の記憶の中で、生きさせて。」これが硝子シリーズすべてに共通するテーマなわけですが、
    アダムに登場するルイス・エルラーは、「記憶の中で生きさせてあげられない」人です。
    今までずっと、記憶の中で生かしていく人間だけを書いてきたので、
    ここで一つ、「記憶を失う」人を書いてみようと思いました。
    簡単に「君の記憶の中で生きさせて」というけれど。
    覚えていられない人はどうすればいいんだろう、という、私から私への問いかけでした。
    そしてここで使われたのが「人形」でした。
    人形というのは人間と違って、「死」を知りません。ある意味では「永遠」なのです。
    だから、そのある種永遠な人形が「覚えて」いれば、その記憶は「永遠」になるのではないか。
    それがルイス・エルラーと、私の考えでした。
    しかしながら、人形は「永遠」ではなかった。
    ほかでもないルイス・エルラーが、自分の「永遠」だったはずのアベルを殺害して、
    永遠では決してありえない人間のハーガルドを手元に残すことに決めてしまったのですから。
    彼の行為は、「永遠はあるのか」という問いにハーガルドが出した答えの、解答……というか具体例にもなっています。

    作品最後に登場する、ルイス・エルラーの最高傑作こと「アダム」。
    アベルとは違い言葉は話さないし、恐らく思考回路などもない、動くこともない。
    けれどその人形は、「ルイス・エルラー」になりました。
    アベルの瞳を持ち、ハーガルドの姿をした、「ルイス・エルラーの記憶」を形どったもの。
    彼の人生を作り上げたものたち、そのすべてがあの「アダム」に組み込まれているわけです。
    その「彼の人生を作り上げたもの」という部分に関しては、ひとまず置いておいて。

    最後のテーマ「心」ですが。
    これは当然「人形の心」、です。
    アベルという人形が得てしまった「心」。人形なのに、人間のような心を持ってしまった。
    これは、ハーガルド初出作品「硝子の瞳」にも共通する部分ですが、
    以前アダムについて書いたときに、
    > 『硝子の瞳』に登場したルイスは「人形であることを拒み、だから人形であることに苦しんだ」のですが
    > アベルは「人形であることを望み、しかし同時に人形であることに苦しんだ」人形です。
    ということを書きました。
    ルイスもアベルも同じ人形だけど、それぞれまったく違う「心」を抱く人形にしたかった。
    ルイスが人形であることを拒んだのならば、
    アベルは人形であることを望む、受け入れる、そんなキャラクターにしたかったのです。
    けれどただ受け入れていては、「心」を持った意味がない。
    作中でルイス・エルラーは言います。「人形が心を持つなんてありえない」と。
    アベルは彼のその考えを知っていたから、自分の「心」を受け入れたくなかった。
    心を持ってしまったら、人形ではなくなってしまう。
    人形でないのならば、ルイス・エルラーの傍にいられなくなる。
    アベルはそう考えていました。
    だから、「人形であることを望んだ」のです。
    でも同時に、「人形であることに苦しん」でしまったのです。
    何故なら彼は、ルイス・エルラーを愛してしまったから。
    ルイス・エルラーはこうも言います。「恋なんてもっとありえない」と。
    ルイス・エルラーはアベルの存在を完全に否定するようなことばかり言っているのです。とても残酷な人ですね。
    だからアベルは何もかもすべてを隠して、彼の望む「人形」のままであろうとした。
    けれどその努力は、ルイス・エルラーがハーガルドに興味をもってしまったときに崩れました。
    彼の望む「人形」であっても、ルイス・エルラーは結局「人間」に縋ってしまった。
    じゃあ今まで自分がしてきたことは一体何だったんだろう。
    そんな風に思っても、おかしくないんじゃないかと思います。
    だから彼はハーガルドにいったのです。「僕は君が嫌いだ」と。
    彼は彼の「心」を、ハーガルドにぶつけたのです。
    そして最後はルイス・エルラーにも晒しました。自分の「心」のすべてを。
    心のどこかで、「こうなっても自分を選んでくれるのではないか」という淡い期待を抱きながら、彼は言うのです。
    「あなたの望む人形であれなくなってしまった僕が必要でないのならば、殺してください」と。
    ……そして彼は、殺されました。
    人形の「心」を最後まで理解できなかったルイス・エルラーの手によって。

    ルイスは人形に人間のように複雑な心があるなんて思ってもいないので、

    アベルの言葉を額面通りに受け取って、だから、殺した。 それだけなのです。

    反対に、ハーガルドは人形の「心」を理解してしまいました。
    そして人形と人間の、どう頑張っても埋められない溝にも気づいてしまいました。
    彼は人形の心を理解したからこそ、硝子の瞳でルイスを殺害したのです。

    ハーガルドの考えは
    「いずれは死んでしまう人間と、何もなければ永遠に生きていられる人形。
    どれだけ想いが通じ合っていても、人形は必ず置き去りにされてしまう。
    仮に死んだとしても、人間と同じ場所(=天国のような場所)にいくことはできない。
    "心"をもって、悲しみを知って、寂しさを知った人形が、
    その、愛した人しか知らない人形が、それに耐えられるのだろうか」
    です。
    彼は人形に対して非情なのではなくて、むしろ、哀れみを含んだ優しさ(≠同情)を持っています。
    心がなければ置いて逝かれても平気だけれど。
    人間であり、いずれその人と同じ場所にいける自分も、妻に先立たれてあんなに哀しかったのに、
    人間よりもずっと純粋な心を持った人形には、その悲しみは重たすぎる。
    だからハーガルドは、ルイスを殺害しました。
    ……硝子の瞳で彼がやったことの説明になればいいなと思ってこの作品を書きました。
    それが伝わったかどうかは分かりませんが、簡単に説明するとこういうことです。


    さて、後回しにした「彼の人生を作り上げたもの」という部分についてですが。

    アダムの瞳の最後のトラックに、「硝子細工の未来へ」というお話があります。
    これは、硝子の瞳からずっと主人公のような立場で活躍してくれた、
    私の大好きな大好きなキャラクター、ハリー・フォンスリーのお話になっています。
    このトラックについて、以前
    > 硝子ノ欠片 という作品の真の終着点であり、
    > アダムの瞳 の解答であり、
    > イヴの心臓 へ繋げるため、そして更に未来へ運んでいくため
    > のお話
    というようなことを書きましたが、まさにこういうお話です。

    硝子ノ欠片の終着点、という点は恐らく分かっていただけると思うのですが、
    アダムの瞳の解答 と言う部分に、「彼の人生を作り上げたもの」はかかってきます。

    人間は、自分の過去の経験から成長していきます。
    つまり、自分の中にある記憶が、「今の自分」を作り上げている...のだと私は考えています。
    だから、ハリーは言いました。
    「君たちは、今の僕を作り上げてくれた、大切な愛しい記憶だから。」

    どれだけ悲しい記憶でも。
    いつかは「大切な愛しい記憶として、愛せるように」なる。
    そうして人は成長して、前へ進めるようになる。

    そして前に進んだハリーは、幸せになれるのです。
    ロレンスという大切な人と出会って、 愛しい記憶を抱いて。

    アダムの瞳 という作品の、「記憶」という大きなテーマの解答です。

    「記憶」を保持していられないルイス・エルラーが、
    「記憶」を保持してくれていたアベルを失ってから、身体の(恐らく心も)成長していないということ。
    「記憶」を保持していくたびに、「心」を得ていくアベル。
    「記憶」を捨てて前に進んだ結果不幸になったドリス。

     

    そして、そんな彼らを見て育ってきて、自分も「記憶」を永遠にしようとしたハーガルド。

    硝子の瞳で、メリアの言葉を聴いて「記憶」を永遠にするには、別に目に見える形にする必要がないことに気づいたハーガルド。

     


    「君の記憶の中で生きさせて。」
    この台詞の重たさが、少しでも増していればいいな、なんて。


    さて、イヴの心臓へ、そして未来へ繋ぐための、という部分ですが。
    このトラックは硝子ノ欠片の終着点なわけですから、
    新たなる硝子ノ欠片、要するに「リバース」した「少年たちの永遠の恋」のお話である「イヴの心臓」への繋ぎ、という単純な意味です。

    ここで「硝子ノ欠片」というシリーズは完全に終わりました。 次からは「硝子ノ欠片-Rebirth-」と言う新シリーズがはじまります!という意思表明といいますか。


    ついでにイヴの心臓が最終的にどうなるのかという微妙なネタバレでもあります...(笑)
    これに関しては、いつかイヴの心臓の続きを書いたときにでも。


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    さてさて、そのイヴの心臓です。
    この作品を書いたきっかけは以前お話したうえに長いので割愛いたしますが。

    この作品のテーマは「約束」と「君の生きる証」です。
    まさに硝子シリーズといった感じの作品にしてみました。
    アダムがひたすら暗かったので、真反対の明るい話にしかったというのもありますが...

    イヴは、「少年たちの永遠の恋」の物語の序章にあたります。
    すごく長いお話ですが、実は導入(プロローグ)にすぎないのです。
    新たなる「硝子ノ欠片」という作品の雰囲気づくりでもありました。
    だから、硝子ノ欠片シリーズ第一作目の硝子の心臓に構成等を似せたんです。

    あと先にさらっと触れておきたいのですが、
    アダムにも似たようなキャラがいるのとか、単純にキャラが濃すぎるのとか
    そういうのもあって、ドクター・エドヴィンがとても重要なキャラクターだと思われてしまったみたいで。
    エドヴィンそのもののテーマは「異常なまでの美への執着」でありますが、
    上記したとおり、この作品のテーマは「約束」と「君に生きる証」なので、エドヴィンはまったく重要な人ではないんです。
    ちなみに、「永遠の美しさ」も別に重要なファクターではありません。

    さて、話を戻しまして。
    テーマの「約束」ですが。
    この約束というテーマは、硝子シリーズの根幹「君の記憶の中で生きさせて」に密に関わったものになっています。
    けれど、せっかく「リバース(再誕)」させるわけですから、硝子の心臓と完全に同じにしてしまうのも面白くないということで。
    エミリオとアドニスにふさわしい「君の記憶の中で生きさせて」という約束にしました。
    このエミリオとアドニスにふさわしい約束は、「君の生きる証」にも繋がってくるのですが。
    作中、頻繁に心臓の音を聴くシーンがでてきます。
    まさにこの心臓の音が「生きる証」なわけです。

    鼓動って、やっぱり「命」を感じられるものですよね。
    心臓があるほうの胸に手をあててみると、脈打っている。
    それは「ああ、私って生きているんだなあ」と実感させてくれます。
    そして心臓は、決して嘘はつかないと思います。
    口でどんなことを言っていても、心臓は決して嘘をつかない。
    好きな人のそばにいれば、鼓動は速まる。口では離れろ、なんて言っていたとしても。
    どれだけ「僕は死んだようなもの」と言っても、心臓は確かに命を刻んでいる。

    心臓は嘘を吐かない。
    心臓は、「その人の生の証」。
    だから、鼓動はその人をその人であると証明してくれるものなんじゃないかな、と。
    そう思って、私はこの作品のキーワードに「これが僕の心臓の音、覚えておけよ、僕と君の生きる証を」という一文を選びました。
    それまでのシリーズは、風鈴の音でしたが。
    次は風鈴よりもずっとずっと、「その人という存在」に近い鼓動に、導かれて。

    「君そのもの」である音に導かれて、「約束」をかわした君にもう一度出会うための物語 のプロローグなわけです。

    死によってはじまる物語なんて、悲しいかもしれないけれど。
    私はこのイヴの心臓を、悲劇だとは考えていません。
    確かに……一番いいのは生きて今の姿で幸せになることなんですけど。

    何があっても、「記憶」を抱いて、受け入れて、愛して。
    そうすれば、いつか「硝子細工の未来」へたどり着けるのだから。

    まあ硝子シリーズじゃなければ最後アドニスは間に合ってエミリオを救って二人はラブラブハッピーエンド!
    ……になったかも、しれないですが。
    これは硝子シリーズなので。「少年たちの永遠の恋」を描くためのお話なので。すみません……。


    そういうわけで(?)
    このイヴの心臓はただ綺麗で優しい、暖かな光のような雰囲気を味わっていただきたいと思っています。
    前述したとおりエドヴィンのキャラが濃すぎるためか、アダムと同レベルの重い話だと思われてしまったのは
    私の未熟さ故なのですが、
    これはあくまでも「導入」なので、ただこの美しい雰囲気を感じるだけで問題ないんです。
    この作品は、これからやっと深い部分に入っていくわけですから。
    「あーこの作品はこういう感じの話なのかー」というのが伝わればそれだけで問題ないのです。

    ここからはじまる新たなる「少年たちの永遠の恋」を、楽しんでいただければ幸いです。


    --

    さてこの硝子ノ欠片-Rebirth-という作品全体に関してですが、
    アダム、イヴは対照的な作品にしたかった。

    アダムは語られる話をじっくりと聴くような、
    それこそ朗読劇のような雰囲気を。

    イヴは、ちゃんと「ボイスドラマ」として、
    その世界の空気を感じてもらえるように。

    そんな風な意識をして台本を書きました。
    それが伝わっていればうれしいです。

    ボイスドラマの台本を書くのが実は苦手で、
    だからイヴは苦労しましたが、とても勉強になった作品です。
    説明的になりすぎず、けれど台詞で情景を伝える。
    改めて意識しながらやるとかなり難しいですね。 ですが今の私にできる最大限の力を出し切って書きました。

    編集も、一つ一つの音に意味をもたせてみました。実はSEがネタバレになっています。

    時間がなかったのと腕の未熟さで、やりたかったことの半分も表現できなかったのが悔しいですが。

    この悔しさは次回に活かしていこうと思います。


    ということで、ずいぶん長くなってしまいましたが。

    最後に。


    素晴らしいイラストを描いてくださった絵師様、
    美しい楽曲を制作してくださった作曲者様、作詞者様、歌唱者様。
    キャラクターたちに命を与えてくださった演者の皆様、

    そして何よりも
    作品を聴いて、更にこんなに長いあとがきをここまで読んでくださった皆様。

    本当にありがとうございました。
    皆様のおかげで、この作品は完成しました。 心より感謝申し上げます。


    まだどこかでお会いできますことを楽しみにしております。

     

     

     

    奈緒弥

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